HPVワクチン(子宮頸がんなどの予防ワクチン)

不活化ワクチン
定期接種

予防するVPD

子宮頸がんなどヒトパピローマウイルス(HPV)に関連するがんや感染症

子宮頸がんなどのHPV感染症を予防するワクチンは、9価「シルガード9」(MSD)、「4価ガーダシル」(MSD)、2価「サーバリックス」(GSK)の3種類です。予防するVPDや接種対象、定期接種/任意接種などは下表のとおりです。

価数
ワクチン名
接種回数および接種間隔 予防するVPD 対象
9価
シルガード9
●初回接種が15歳未満の場合
2回接種:初回から5か月以上(標準的には6か月)あけて2回目。
3回接種:初回から1か月以上5か月未満(標準的には2か月)あけて2回目。2回目から3か月以上(標準的には4か月)あけて3回目。
●初回接種が15歳以上の場合
3回接種:初回から1か月以上(標準的には2か月)あけて2回目。2回目から3か月以上(標準的には4か月)あけて3回目。
90%の子宮頸がん(16、18、31、33、45、52、58型)、尖圭コンジローマ(6型、11型) などのヒトパピローマウイルス感染症 9歳以上の女子
4価
ガーダシル
初回から1か月以上(標準的には2か月)あけて2回目、2回目から3か月以上(標準的には4か月)あけて3回目。 70%の子宮頸がん・肛門がん (16、18型) 、尖圭コンジローマ(6、11型) などのヒトパピローマウイルス感染症 9歳以上の男女
2価
サーバリックス
初回から1か月以上(標準的には1か月)あけて2回目、2回目から2.5か月以上(標準的には5か月)かつ1回目から5か月以上あけて3回目。 70%の子宮頸がん(16、18型)などのヒトパピローマウイルス感染症 10歳以上の
女子

日本では、サーバリックスが2009年12月に、ガーダシルが2011年8月に発売され、2013年度から定期接種になりました。9価シルガード9は2021年2月に発売され、2023年4月から定期接種になりました。

接種時期と接種回数

定期接種の対象年齢は小学校6年生~高校1年生相当の女子です。
9価ワクチンの場合、初回接種が15歳未満では2回または3回接種。15歳以上では、3回接種が必要となります。
定期接種のサーバリックスとガーダシルは、接種スケジュールと成分が異なりますので、初回に接種したワクチンと同じ種類のワクチンを必要回数受けることが必要です。

接種機会を逃した人のキャッチアップ接種

1997年4月2日~2006年4月1日生まれの女性は、2022年4月から2025年3月までの3年間、定期接種としてHPVワクチンを無料で受けられます。
また、2022年3月までに自費でワクチンを受けた人に対して接種費用を払い戻す制度があります。対象者、申請方法、償還額、申請期間は自治体ごとに異なる場合があります。詳しくは、お住いの自治体にお問い合わせください。

おすすめの受け方

小学6年生になったらできるだけ早く9価ワクチンの2回接種を受けましょう。
遅くとも15歳になる前に9価ワクチンの初回接種を受けましょう。

ワクチンの効果

いずれのワクチンもワクチンに含まれているタイプのHPV感染症を防ぎ、子宮頸がんなどの発病を予防します。また、がんになりやすい16、18型のHPVは、若年者に多いといわれています。初めての性交渉の前までに受けることで予防効果が高まります。
実際に、スウェーデンの報告では、17歳未満のワクチン接種で子宮頸がんリスクが88%減少しました。英国では、12-13歳のワクチン接種で87%減少しました。

ワクチンの種類によって効果のあるウイルスの型が異なり、予防できるVPDが変わります。サーバリックス、ガーダシルは、ともに約70%の子宮頸がんを予防し、効果は20年くらい続くとされています。シルガード9は、約90%の子宮頸がんを予防できます。日本より7~8年前からワクチン接種をはじめた欧米やオーストラリアでは、ワクチンの有効性が報告され、子宮頸がんが減少しています。

また、ガーダシルは肛門がんと尖圭コンジローマを、シルガード9も尖圭コンジローマを予防できます。

ワクチンと検診で予防

ワクチン接種だけですべての子宮頸がんが防げるわけではありません。性交渉の経験がある人は、必ず子宮がん検診を受けることが大切です。検診受診率は、欧米では約80%ですが、日本ではなんと約40%とたいへん低いのが問題です。
HPV感染症による子宮頸がん予防で最も重要なことは、定期接種の年代の人は必ずワクチンを受けること。性交渉経験のある人は、20歳を過ぎたらワクチン接種の有無にかかわらず子宮がん検診をしっかりと受けることです。

接種後の注意

副作用として受けたところの痛み、局所反応があります。接種時の痛さはほかのワクチンと大きく変わらないとされますが、数日間にわたり筋肉痛がおこることがあります。

このワクチンは血管迷走神経反射(失神)を起こすことがあります。これはワクチンが痛いためでなく、ワクチンが痛いのではないかと緊張したり、その緊張が解けたりしたときに起こります。10歳以上の女性は、ワクチン接種(種類は問いません)だけでなく血液検査や献血でも失神を起こす人がいます。緊張しやすい人は接種前に接種医に申し出て、寝た姿勢のままで受けるなど30分程度はしっかり落ち着くまで接種した医療施設で横になるのも良いことです。

予防接種ストレス関連反応(ISRR)

2020年1月、WHOは「予防接種ストレス関連反応(Immunization Stress-Related Responses:ISRR)」という概念を発表しました。 ISRRは、年齢(10歳代)、以前の注射後の失神などのいやな経験、血液や注射やけがに対する恐怖などの予防接種に関連する「不安」によるストレスが原因で起こりやすくなります。
接種前~接種後5分以内におこる急性ストレス反応や血管迷走神経反射と、接種後数日でおこる解離性神経症状反応(Dissociative Neurological Symptom Reactions:DNSR)に分類されます。
積極的な勧奨接種中止のきっかけとなったHPVワクチン接種後の多様な症状はDNSRの特徴と一致します。DNSRは予防接種以外のストレス要因によってもおこりますが、接種後 7 日以内に生じた反応はISRRと考えることが妥当とされています。
接種に対して極端な不安や恐怖心がある場合は、無理をせずにかかりつけ医に相談してください。また接種後に、健康に異常を感じた場合は、不安が症状をさらに悪化させることもありますので、自己判断をしないことが大切です。

男子のHPVワクチンの接種

HPV感染は男女間で感染を繰り返すため、男女にワクチン接種をすることで感染の広がりを抑えることができます。男性のワクチン接種の目的は、男性本人のHPV感染による病気を予防することです。
実際に男子へのワクチン接種は多くの国で推奨され、アメリカ、イギリス、オーストラリアなど20か国以上の国で公費接種が行われています。日本では、2020年12月から任意接種で男性が4価ワクチンを受けられるようになりました。

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