おたふくかぜにかかったけんじくんの場合

けんじくん(仮名)は今年、小学校2年生になる男の子です。
春休みが始まった頃、夕食のときに耳が痛いと言い始めました。翌朝になると耳の下も腫れてきました。でも、けんじくんは幼稚園のときに軽くおたふくかぜにかかったことがありました。なんだろうと思って、以前のおたふくかぜのときに診てもらったかかりつけの小児科に行きました。
小児科の先生の説明は、幼稚園のときは2日も腫れなかったので、おたふくかぜではなかったと思うということでした。でも今はこの辺で流行っているから、今度こそおたふくかぜだろうということでした。はっきりさせておく方がよいと言われ、血液検査を受けることにしました。また、おたふくかぜで耳が聞こえなくなることもあるので、2週間耳のそばで指をこすって耳の聞こえを確認すること、そして聞こえが悪いようならすぐに連絡するようにと説明され、返事用のはがきも渡されました。

4日目くらいから、「左側で聞こえない」ということを言うこともありましたが、ふざけていると思い、そのままにしていました。春休みだったので、その後、小児科には行きませんでした。でも2週間くらいして、やはり左側が聞こえないようだったので、近所の耳鼻科に行きました。聴力検査をしてもらいましたが、「異常なし」ということでしたので、安心して帰ってきました。小児科へは返事のはがきを出していませんでした。

新学期になり学校の定期健診で聴力検査がありました。保健の先生は、けんじくんの左側が聞こえていないようなので、校医に連絡を取りました。校医はけんじくんのかかりつけの小児科医でした。小児科医は急いでけんじくんのお母さんに連絡を取り、受診するように言いました。小児科に行くと、内線電話を使って左右の聞こえを調べてもらいましたが、やはり左耳は聞こえていないようでした。小児科で別の耳鼻科を紹介してもらい、聴力検査をしてもらったところ、左は聞えていないということがはっきりしました。耳鼻科の先生は、「おたふくかぜによる難聴なので、治療法はない」と説明しました。

お母さんは小児科でけんじくんの左耳が聞こえていないと言われたその日に、妹にはおたふくかぜのワクチンを受けさせました。けんじくんからはうつっていなかったようですが、地域での流行が続いていたからです。
その小児科医は、その地域の多くの子どもがワクチンを受けていたら、おたふくかぜの流行は起こらなかったかもしれないと反省し、それからはおたふくかぜワクチンをより積極的に勧めるようになったということです。
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