破傷風(はしょうふう)にかかったあやかちゃんの場合

あやかちゃん(仮名)は5歳の女の子です。外遊びの大好きな活発な子どもでした。カゼをひくことが多かったせいか、ワクチンはほとんど受けていませんでした。

ある日、あやかちゃんは幼稚園でころんで、ひざをすりむきました。すり傷は軽かったので、数日でよくなりました。

しばらくたって、あやかちゃんは「背中がいたい」とお母さんに言いました。痛みは夕方になってもなおりません。それどころか、顔がひきつり、手足がピクピクするようになってきました。あやかちゃんが「いたい、いたい」と泣くと、さらに全身がつっぱりました。とても心配になったお母さんは、急いであやかちゃんを救急病院に連れて行きました。

診察をしたお医者さんはとても深刻な顔をして「破傷風かもしれません」と説明しました。あやかちゃんはすぐに集中治療室に入院となりました。

病室の明かりやモニターの音もすべて消されました。破傷風にかかると、少しの光や小さな音で、全身が強いけいれんを起こすからです。恐ろしいことに破傷風では意識ははっきりしているので、体が痛くても泣くことも声を出すこともできないのです。

でも、あやかちゃんはだんだんと息をすることもできなくなってしまいました。とうとう人工呼吸器がつけられ、麻酔がかけられました。人工呼吸のためにのどに穴を開ける「気管切開」という手術も行われました。人工呼吸器をはずすまでに3週間かかりました。

お医者さんは「破傷風はかかっても免疫がつきません。必ずワクチンを受けてください」とご両親に説明しました。退院前に、あやかちゃんは初めて三種混合ワクチン(DPT)を受けました。

なんとか1か月余りで退院することができました。でも、あやかちゃんはまた体がつっぱるのではないかと不安でたまりません。以前の元気なあやかちゃんに戻るのはいつのことでしょうか。

今でもあやかちゃんののどには気管切開の傷あとが残っています。今でもお母さんはそれを見るたびに「きちんとワクチンを受けさせていたら、こんな目にあわずに済んだのに」と自分を責め続けています。

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