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2025-06-04 18:15:06

百日せき予防で最も重要なのは妊娠中の三種混合ワクチン接種

百日せきの流行が止まらない

百日せきは、百日せき菌による感染力のたいへん強いVPDです。新生児から高齢者までが感染します。とくに、ワクチン接種前の新生児、乳児が感染すると重症となり、集中治療が必要となり、死亡することがあります。近年、耐性菌の出現が世界的に問題視されています。

新型コロナウイルスに対する感染対策が緩和され、世界各国で2023年以降、百日せきの流行が報告されています。日本では、2024年から報告数が増加し、2025年は第19週(5月11日時点)で過去最多だった2019年の年間報告数を超え、21週(5月25日時点)も増加傾向がみられます。


IDWR速報値(https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/rapid/2025/index.html)より作図

 

最も重要なのはワクチン未接種の赤ちゃんの予防

百日せきは、ワクチンで予防できるVPDです。生後2か月になったら、できるだけ早く五種混合ワクチンを受けてください。重要なのは、ワクチン接種前の新生児、乳児の重症百日せきの予防です。日本では妊婦の百日せきに対する抗体価は低く、母親からの移行抗体は出生児の百日せきを予防するには不十分なため、乳幼児では、百日せきに感染し重症化することがあります。乳児は典型的なせき発作を認めず、痙攣(けいれん)、無呼吸、脳症、肺高血圧などを合併し死亡することもあります。ワクチン接種前の低月齢の乳児の重症百日せきの予防には、妊娠中のワクチン接種が必要です。

 

「妊娠中のワクチン接種」で赤ちゃんの百日せきを予防

生まれて間もない赤ちゃんを百日せきから守るには、妊娠中の女性が三種混合ワクチン接種を受け、胎盤を通じて赤ちゃんに百日せきに対する抗体が移行することが必要です。妊娠中のワクチン接種は、出生直後から百日せきを予防することができます。現在、三種混合ワクチンは出荷制限されていますが、妊婦さんが最優先で三種混合ワクチンの接種を受けられる対策が重要と考えます。

 

「妊娠中のワクチン接種による百日せき予防」の課題―調査結果から

米国では妊婦さんへのワクチン接種が定期接種で実施されています。一方で、日本では任意接種のためにワクチンの供給量だけでなく、情報も十分ではありません。当会では、百日せきを含む妊娠中の予防接種の啓発を進めるにあたり、2025年4月、妊婦さんと1歳までのお子さんの母親に妊娠中の予防接種について調査を実施しました。(詳細はリリースをご覧ください)

 

◆百日せきの認知度が低い

インフルエンザや新型コロナウイルス感染症は、具体的な症状や乳幼児の重症化リスクについて、ほとんどの人が知っている。一方で、百日せきは、病気の詳細を知っている人は6割に満たない。妊娠中の103名では、病気の詳細を知っているのは4割まで下がる。

 

◆妊娠中のワクチン、特に百日せきのワクチンの認知度が低い

妊娠中のワクチンの接種は一般的ではなく、特に百日せきのワクチン*を知っている妊婦は、4人に1人。妊娠中のワクチンを知っている人では、インフルエンザで5割強、百日せきで約4割が接種している。妊娠中のワクチンを知らせることで接種につながり、結果的に本人や赤ちゃんを感染症から守ることが期待できる。
*百日せきのワクチンは、三種混合ワクチン

 

流行時だけでなく、妊娠中の三種混合ワクチン接種を推奨

新生児、乳児の重症百日せき予防には、妊娠中のワクチン接種が必要です。現在のような流行期だけでなく、定期接種化に向けて、小児科学会と産婦人科学会などのアカデミアが三種混合ワクチンに対する推奨を表明し、さらに接種後の有効性、安全性を評価できるシステムを構築し、妊婦さんが安心して接種できる環境作りが求められます。

 

リリース「百日せきの流行が続く今、予防のためにできること 最も重要なのは妊娠中の三種混合ワクチン接種」

(2025年6月4日)