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RSウイルス感染症

妊娠中から知っておきたいRSウイルス感染症
赤ちゃんを守る2つの予防法

低月齢や基礎疾患がある赤ちゃんがかかると重症になりやすいRSウイルス感染症。赤ちゃんを守る2つの予防法として、「妊娠中に受けるワクチン」と「赤ちゃんが受ける予防注射」があります。

RSウイルス感染症はどんな病気?

赤ちゃんにとって、油断できない感染症

  • RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)による呼吸器の感染症で、いわゆる「かぜ」の一種
  • 乳幼児から高齢者まで年齢を問わず感染し、何度も感染をくりかえすことがある
  • 多くは鼻水・せき・発熱など軽いかぜの症状で数日以内に回復する
  • RSウイルスは、乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%の原因¹⁾とされ、小児呼吸器感染症の主な原因

重症になりやすいのは?

初めて感染した赤ちゃんは要注意

  • RSウイルスに初めて感染した時は、重症化しやすく、入院することがある
  • 特に生後1~2か月の赤ちゃんが重症になりやすい
  • 初感染のうち20~30%が気管支炎や肺炎を発症¹⁾し、鼻水・発熱・せきに加えて、ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸音(喘鳴)や呼吸困難がみられることがある

早産や基礎疾患がある赤ちゃんは特に注意

  • 以下のような赤ちゃんは、重症化リスクがさらに高くなる

 -早産児
 -慢性肺疾患、先天性心疾患、免疫不全、ダウン症候群などの基礎疾患がある乳幼児
 -生後6か月以内の赤ちゃん

かかりやすい年齢は?

2歳までにほぼ全員が感染

  • 生後1~2か月の赤ちゃんが最もかかりやすく、重症化しやすい
  • 生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の乳幼児が一度は感染する¹⁾
  • 毎年12~14万人の2歳未満の子どもがRSウイルス感染症と診断されている²⁾

人から人へ感染して流行する

  • RSウイルスは、せき・くしゃみ・鼻水などによる飛沫感染や、手指や物を介した接触感染で広がる
  • 年齢を問わず何度も感染する
  • 家族内、保育施設内での集団感染が起こりやすい
  • 赤ちゃんや子どもがいる家庭では、流行期に家族の44%が感染するという報告がある³⁾
  • 感染力の強さを示す基本再生産数(=1人がうつす平均人数)は3.47とされ、インフルエンザ(1.68)よりも感染力が強い⁴⁾

流行するシーズンは?

流行時期は年によって変わる

  • 以前は秋~冬にかけて流行するのが一般的だったが、2021年以降は春~夏に流行する年がある
  • 年によって流行の始まりやピークが異なり、予測が難しくなっている
  • 一度流行が始まると、急激に患者数が増え、2〜5か月間続く傾向がある
        

「RSウイルス感染症の流行時期(2018年~2025年)」

地域によって流行のタイミングや重症度に差がある

  • 都市部では人口密度が高いため、流行が早く広がりやすいとされている
  • 都道府県ごとに流行の開始時期や期間が異なるため、地域の情報をこまめに確認することが大切

日本の子どものRSウイルス感染症は?

重症化リスクがなくても、だれにでも入院リスクがある

  • 毎年、119,000人~138,000人がRSウイルス感染症と診断
  • 入院は生後6か月未満、特に生後1~2か月の赤ちゃんに多く見られる
  • RSウイルス感染症と診断された2歳未満の子どもの4人に1人(約3万人)が入院
  • 入院した2歳未満の子どもの9割は、基礎疾患がなく正期産(妊娠37週~41週に誕生)。健康に生まれた赤ちゃんでも重症化する可能性がある
  • 入院した2歳未満の子どものうち9%は人工呼吸器が必要となる⁵⁾
  • 脳炎や脳症を合併し、後遺症が残るケースや突然死との関連も指摘されていて注意が必要
  • RSウイルスは、乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%の原因¹⁾とされ、小児呼吸器感染症の主な原因
  

(健康保険請求データベースをもとに2017年1月~2018年12月の2歳未満の乳幼児のRSウイルス感染症について調べた研究報告5)による)

     

妊娠中にできる予防

ママが受けるワクチン

  • 妊娠中の女性が接種するワクチン(任意接種、1回接種)
  • 妊娠32~36週(妊娠24週から接種可)に接種
  • 接種によりママの体内で作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行し、生後6か月までのRSウイルス感染症を予防

誕生後にできる予防

赤ちゃんが受ける、新しい長期間持続型抗体薬「ベイフォータス」

  • 赤ちゃんが受ける予防注射(流行期に1回)。
  • 以下の場合に接種が検討されます:

 - 妊婦がワクチンを接種していない
 - 妊娠中にワクチンを接種したが早産で移行抗体が不十分
 - 早産児や基礎疾患のある赤ちゃん(保険適用)

  • すべての赤ちゃんに接種可能ですが、保険適用外の場合は費用が高額になるため、かかりつけ医と相談を。

赤ちゃんが受ける、長年使われてきた抗体薬「シナジス」

  • 赤ちゃんが受ける予防注射(流行期に月1回、シーズン中6~8回程度接種)。
  • 以下の場合に接種が検討されます:

 - 早産児(在胎35週以下)
 - 慢性肺疾患、先天性心疾患、免疫不全、ダウン症などの基礎疾患がある赤ちゃん
 - 肺低形成、気道狭窄、先天代謝異常症、神経筋疾患などの特定の病態がある場合

  • 保険適用の対象は限られており、医師の判断と事前の申請が必要です。

赤ちゃんを守る2つの予防法

妊娠中のワクチンと誕生後の抗体薬

  • どちらの注射も、赤ちゃんをRSウイルスから守るために重要
  • 妊娠したら出産準備として、2つの予防法について考えましょう

アブリスボ ベイフォータス シナジス
分類 妊婦用ワクチン 長期間作用型・抗体薬 抗体薬
投与対象 妊婦(妊娠中に接種) 新生児・乳児(生後接種) 新生児・乳児(生後接種)
作用メカニズム 母親から胎盤を通じて、おなかの赤ちゃんにRSウイルスの抗体を移行 赤ちゃん自身が抗体を獲得 赤ちゃん自身が抗体を獲得
接種回数 1回 流行期に1回 流行期に毎月1回、6~8回程度
費用 任意接種 ・保険適用:早産児、基礎疾患(慢性肺疾患、血行動態に異常のある先天性心疾患、免疫不全、ダウン症候群)をもつ24か月齢以下の乳幼児
・保険適用外:上記以外の乳幼児
・保険適用:早産児、基礎疾患(気管支肺異形成症(BPD)、血行動態に異常のある先天性心疾患、免疫不全、ダウン症候群、肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症、神経筋疾患)をもつ24か月齢以下の乳幼児
予防効果の期間 生後約6か月 注射後5か月以上 注射後約1か月

¹⁾ アレルギー 56 (12), 1493-1497, 2007
²⁾ 国立健康危機管理研究機構 感染症発生動向調査週報
³⁾Hall CB, et al., . N Engl J Med 294:414-419, 1976. Hall CB, et al., Pediatrics 62:728-732, 1978.
⁴⁾Spencer JA et al., J Theor Biol, 2022.
⁵⁾Kobayashi Y et al.: Pediatr Int 64(1): e14957, 2022.

(2025年6月更新)